飲食店などの店舗で実施したい耳の不自由な人(聴覚障害者)のための工夫

2020.05.28店舗の安全管理
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子ども連れ、お年寄り、ケガをして松葉杖を使用している方など、小売店や飲食店にはさまざまなお客様が来店されます。なかには、耳に障害を持ったお客様もいらっしゃいます。

聴覚障害をお持ちのお客様が店舗にいらっしゃったとき、店舗側でお迎えする準備ができていないと、思わぬ事故につながる可能性があります。事故を未然に防ぎ、聴覚障害をお持ちのお客様が来店しやすく、心地良く過ごせるような店舗にするにはどうしたら良いのでしょうか。

聴覚障害とは

聴覚障害とは、音や声が聞こえないまたは聞こえにくいなどといった、聴覚に障害があることです。生まれつき耳が不自由な方や、事故または病気で聴覚に障害を生じた方など、人によって状況はさまざま。聞こえの程度にも、個人差があります。全く聞こえないという方もいれば、補聴器をつけることで少しは聞き取れる方もいらっしゃいます。

 

「耳マーク」とは?

聴覚障害者の方のなかには普通に話すことができる方もいるため、外見から聴覚障害者の方であることが判断できない場合もあります。そこで、聴覚障害者の方を示す「耳マーク」というマークが普及しています。聴覚障害をお持ちの方の多くが、耳マークが入ったバッジや札をつけているため、耳マークでの判断も可能です。

 

参考資料:耳マーク – 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

https://www.zennancho.or.jp/mimimark/mimimark/

 

聴覚障害をお持ちの方が店舗を利用するときに困ること

聴覚障害者の方が外出中に特に困るのは、情報伝達の難しさです。店舗であれば「店内アナウンスや呼び出し音が聞こえない」といった問題や「声が聞こえないため通路で人にぶつかってしまう」といった問題が出てきます。こうした問題やトラブルから守るため、聴覚障害者の方に合った対応が必要です。

 

耳の不自由なお客様とコミュニケーションを取る方法

聴覚障害をお持ちの方は、声でのコミュニケーションが困難です。大声で話しても聞こえない方もいらっしゃいます。ここでは、聴覚に障害を持った方との適切なコミュニケーション方法を見ていきましょう。

手話


手や指、体などを利用して具体的に表現し会話することを手話といいます。手話には、もともと聴覚障害を持った方たちが使っていた「日本手話」と、日本語の文法・語順に合わせた「日本語対応手話」の2種類があります。日本手話は、一般的な日本語の文法・語順と異なるため、現在は日本語対応手話を使う方が増えてきています。

手話は、本やテレビ、インターネットなどで気軽に学ぶことができますし、地域のボランティアサークルなどで習うことも可能です。

筆談

筆談とは、紙とペンなどを使って文字でコミュニケーションを取る方法です。書くことで、確実に情報を伝えることができます。飲食店であれば、注文内容を筆談でやりとりすると、注文間違いを防ぐことが可能です。筆談は特別なスキルが不要なので、誰でも簡単に取り入れられます。ただし文字を書くのに時間がかかるため、文章は簡潔にまとめる必要があります。

空書

指を使い、空中や手のひらに文字を書いて伝える方法です。空書(くうしょ)のほか、空書き、空文字と表記されることもあります。ポイントは伝わりやすく大きく文字を書くことです。こちらもスキルが不要のため、取り入れやすい方法です。

口話

口話(こうわ)とは、話し手の口や舌の動き、表情から話の内容を理解してもらう方法です。口の動きが分かるようにはっきりとしゃべり、早口やスローになりすぎないように話します。また、1音ずつ区切るのではなく文節で軽く区切る方が分かりやすいでしょう。口話を利用する際は、マスクを外すなどして口元が見えるように配慮する必要があります。

耳の不自由な方の来店に備えて準備しておきたいもの

聴覚障害をお持ちのお客様が来店することを考えて、準備しておきたいものはいくつかあります。

 

筆談用のツール


どのような店舗でも必ず準備しておきたいものが、筆談するための紙とペンなどのツールです。いつ聴覚障害をお持ちのお客様に話しかけられてもいいように、従業員全員が常にメモ帳とペンを持ち歩くようにしましょう。ホワイトボードや電子メモパッドなども準備しておくと、相互にコミュニケーションが取れるのでおすすめです。

そして、いつでも筆談に応じる従業員がいるということを、店舗の入り口や店舗のウェブサイトに記載しておくと、聴覚障害をお持ちのお客様が安心して店舗を利用することができます。

写真付きのメニュー表

飲食店であれば、すべてのメニューの写真が載っているメニュー表を用意しておきましょう。どのようなメニューなのか、どれくらいの量があるのかを視覚で把握できるようにしてあげると、筆談でたくさんの会話をする手間も省けるため、お客様がメニューをスムーズに選ぶことができます。

また、聴覚障害をお持ちの方は、注文時に従業員を呼ぶことが困難です。呼び出しボタンを設置するなどして、呼び出しやすくなるような対応も心掛けましょう。

 

手話ができるスタッフ

「もの」ではありませんが、手話ができる従業員がいるとさらに安心してご来店いただけます。既存の従業員に対して手話講座を行うなどして習得を促すほか、採用面接の際に尋ねるなどして手話ができる従業員を採用するのも良い方法です。聴覚障害を持っている方を従業員として雇用するのも良いでしょう。

 

耳の不自由な方の店内事故を予防するための対策

耳が不自由な方は音や声が聞こえないため、店内で思わぬ事故が発生することもあります。そのため、店内の事故を予防するための対策が必要です。

通路を広く取る

聴覚障害をお持ちのお客様が来店された際の思わぬ事故を予防するために、なるべく店舗内の通路は広くしておきましょう。聴覚障害をお持ちのお客様は、後ろから追い越そうとするほかのお客様の存在に気がつけないことがあります。そのような状況で、ぶつかり事故が起こってしまう可能性を防止するために、通路のスペースは広く取っておきましょう。

 

従業員を対象に研修を実施する

聴覚障害をお持ちのお客様が、店舗で心地良い時間を過ごせるよう、そして思わぬ事故を防止できるよう、従業員全員で研修をしておくこともとても重要です。やりとりをスムーズにするために、筆談で用件を簡潔に伝える練習や、事故を予防するために、すれ違う際の配慮の練習など、あらゆる状況を想定してしっかりと準備をしておきましょう。

特に、地震や火事などの緊急アナウンスがあった際、聴覚障害者の方は聞き取ることができません。そのため、緊急アナウンスがあった場合、聴覚障害者の方には筆談で伝える必要があります。緊急時に、聴覚障害を持った方も安全に誘導できるよう、研修しましょう。

 

サポート役をつける

聴覚障害のあるお客様が来店されることが事前に分かっている場合は、来店当日にサポートする担当従業員を1人つける、などの配慮も良いでしょう。従業員が丁寧な対応をすることが、お客様自身、そしてほかのお客様の快適な時間を作ることになります。

 

まとめ

聴覚障害をお持ちの方は声や音による案内が聞こえないため、手話や筆談、口話などを取り入れての対応が必要です。手話を習得するには時間が必要ですが、筆談であれば誰でも取り入れやすく、聴覚障害者の方と確実なコミュニケーションが取れます。

聴覚障害の方でも安心して利用できる店舗を目指すことで、利用者やリピーターが増えるでしょう。

 

 

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