子供の転落事故の原因は?売場でできる予防策について
2019.03.25店舗内の危険事故誰にとっても安全な店舗を作ることは簡単なように思えますが、実は大変難しいことでもあります。万全の対策をしていたつもりでも、「まさか、そんなところにのぼるなんて……」というようなお客様の想定外の行動によって事故が発生してしまうケースもあるのです。
店舗側はあらゆる可能性を考え、事故につながる行動を防止する安全対策を行う必要があります。今回は、売場での子供の転落事故についてご紹介します。
「まさか」で起こる転落事故
店舗を設計する際には、見た目の美しさや動線の効率性、そして安全性を考えて設備を揃えるというのが一般的です。しかし、店舗が「これなら安全だろう」と考えるものが100%安全かというと、そうではありません。特に子どもなどは、何の変哲もない設備にも、大人が思いもよらないような遊びを見出すものです。
手すりを足がかりにして柵を乗り越え、転落!
階段やスロープ、通路の多くには、高齢者や身体の不自由な方のために手すりが取り付けられています。この手すりを足がかりに、子どもが柵や塀を乗り越えて遊び、転落したケースが報告されています。
店舗は転落事故防止のために、柵や塀を、手すりを足がかりにしても越えられない程度の高さにするなどの安全対策を行う必要があります。
階段まわりの手すりに座って、転落!
階段やエスカレーターなど、吹き抜けになっている場所の手すり壁にも注意が必要です。一番高い部分である天端(てんば)が水平になっている場合は、飲み物や荷物などを置いてしまいがちです。重さのあるものが落下すると、大きな事故にもつながり大変危険です。さらに子どもが腰掛け、何かの拍子にバランスを崩して転落してしまうケースも考えられます。
店舗側は、転落の可能性がある手すり壁は天端を傾斜したもの、あるいは曲面にし、ものを置いたり腰掛けたりできないようにあらかじめ事前対策を講じましょう。
バルコニーの天窓を踏み抜いて、転落!
最上階のバルコニーには、店内に光を取り入れるための天窓が設置されていることがあります。天窓が子供でものぼれる高さにある場合、この天窓部分にのぼって立ち、踏み抜いて転落してしまうケースもあります。下が吹き抜けであった場合、かなりの大事故につながる可能性もあるため大変危険です。
店舗側は天窓の強度を上げるとともに、周辺に柵や植え込みを設け、容易に天窓の上にのぼれないように対策を講じる必要があります。
転落事故の事例紹介
ここでは、商業施設内で発生した転落事故の事例をご紹介します。
【事故事例1】エスカレーターから落下し骨折した事故事例
小学生の子供が、上りエスカレーターの手すりに外側からぶら下がった状態で1階から2階へのぼっていたところ、2階付近で手に力が入らなくなり1階の床に落下。片足を骨折する重症を負いました。
【事故事例2】飲食店内の遊具から落下し意識不明となった事故事例
小学生の子供が、飲食店の敷地内に設置されているすべり台から落下。一時意識不明の重体となりました。
【事故事例3】40代男性がエスカレーターから落下し死亡した事故事例
この事故事例は子供の事故ではありませんが、エスカレーターによる重大事故の事例のひとつとしてご紹介します。
40代男性が職場の同僚たちとの会食後に、飲食店の入っているビル内のエスカレーターから落下した事故です。男性は会食を行った飲食店のそばにあった下りエスカレーターの手すりに、後ろ向きの状態で寄りかかりそのまま乗り上げ、バランスを崩して階下へ転落。頭など強く打ち、落下の約3時間後に死亡が確認されました。
遺族はビルの管理会社などを相手に損害賠償を請求しましたが、背中でエスカレーターの手すりに乗り上げるという通常では考えられない使用法が原因となり事故が発生したと判断され、遺族の請求は棄却されています。
このような異常使用までを想定して対策をする必要はないという判決にはなりましたが、この事故以降、商業施設での転落事故についてさらなる安全対策が講じられる大きなきっかけとなりました。
転落事故が起きる原因は?
転落事故の原因は、大きく2つに分けられます。
【原因1】設置環境や安全対策の不備
事故の原因としてまず挙げられるのは、手すりが取れかかっている、ガラス窓が外れているなどの施設面での不備です。また、転落が予想される場所に柵や落下防止板を設置していない、注意喚起がなされていないなどの、安全対策が欠けていることが原因で事故が発生することもあります。
店舗側は、このような不備による転落事故が発生することのないよう、定期的なメンテナンスや安全対策を行わなくてはなりません。
【原因2】利用者の誤使用や異常使用
利用者が転落事故発生箇所の周辺で遊んでいたり、ふざけながら利用していたりすることも、事故原因となります。乳幼児の予想もつかない行動や、小中学生の悪ふざけなどによって、重大な事故が発生しています。
また、成人によるアルコール摂取やイベントへの熱狂時など、正常な判断力を失った状態で通行・使用をすることも事故原因のひとつです。子供の単独利用やこのような状態での利用が想定される場合には、より一層の安全対策が必要です。
子供の転落事故の予防策
ここでは、売場でできる転落事故の予防策をご紹介します。
【予防策1】危険箇所に入れないようにする
転落事故の危険性がある場所については、塀や柵を設置したり、既存のものより高くしたり、植え込みを配置するといった物理的に侵入を防ぐ対策を施しましょう。
明らかに危険かつ、立ち入り禁止にしてもお客様のお買い物や通行に問題がない場所であれば、塀や柵を設置した上で「立ち入り禁止」と明示することをおすすめします。万が一事故が起きた際に、立ち入り禁止となっている旨が明示されているかどうかは、重要な争点となります。事故の可能性を低減すると共に、事故発生時の責任問題についても考えながら予防策をおこなっていくことが賢明です。
エスカレーターからの転落事故を防ぐためには、転落防止板や、手すりへの乗り上げを防ぐ誘導柵の設置などの予防策が行われています。
【予防策2】ガラスなどを強化する
転落事故が起こりうる箇所がガラス面となっている場合、強化ガラスや合わせガラスに変更することで、事故発生の可能性を低減することができます。
【予防策3】張り紙やアナウンスなどで注意喚起をする
危険箇所の周辺に張り紙などをし、利用者に注意喚起をすることも有効な対策です。店内アナウンスや音声案内などで注意を呼びかけるのも良いでしょう。
設置物による注意喚起だけでなく、店員や警備員が定期的に見回りを行うことも大切です。
少し大げさでちょうどいい。安全対策はさまざまな視点で考えよう
思わぬ転落事故を招くのは、「まさかそんなことはしないだろう」という油断です。「こんなところにのぼる人なんていないだろう」「危険だというのは見れば分かるだろう」というのは楽観的な視点であり、安全対策を考える上では適切ではありません。
大きな転落事故を防ぐためには、塀や柵を高くする、植え込みを植える、ガラスを強化する、注意書きで禁止事項を周知徹底するなど、「少し大げさだな」と感じるくらいの対策が必要です。
子どもはもちろん、少しせっかちな人や不注意な人など、さまざまな人の視点に立ってみることで、「ここは少し危ないのでは」と思えるポイントが見つかるのです。ぜひさまざまな視点から転落事故の予防策を考えてみてください。
まとめ
今回は商業施設での転落事故について、事故原因や予防策について考えてみました。転落事故のリスクがあるのは子供も大人も同じですが、特に子供は予想外の行動を取ることがあります。さまざまな場合を想定し予防策を行い、安全な売場づくりを目指してください。