近所での買い物くらいなら、赤ちゃんを家に置いて外出してもいい?
2020.06.12子どもとのお買い物Q&A買い物や用事で出掛けたくても、「赤ちゃんが寝ついたばかりで、起こすとかわいそうだし……」、「感染症が流行っているから人の多いところは心配……」と赤ちゃんを外に連れて行くのをためらってしまう、というお母さんも多いのではないでしょうか。ご自身の気分転換のために1人で外出したいと考える方もいらっしゃるかもしれません。ほんの数分、数十分でササッと済ませられる用事だと余計に、「赤ちゃんを家に置いて外出したい!」ともどかしく思うものです。
中には、両親世代の人やママ友などから「昔はよく赤ちゃんを置いて買い物に行ってたよ」「私は近所だったら赤ちゃん置いて買い物行くよ」といった話を聞いて、「少しくらいなら……」と赤ちゃんを置いて外出してしまうお母さんもいるようです。果たして、近所での買い物くらいなら赤ちゃんを家に置いていっても良いのでしょうか。
赤ちゃんを家に置いて外出はアリ?ナシ?
結論から言えば、赤ちゃんを家に置いて外出することは、たとえ数分であってもおすすめできません。その理由は多岐にわたります。
外出していると赤ちゃんの異変に気がつけない
たとえばトイレや食事の支度など、家の中で数分だけ赤ちゃんから目を離すことはよくあることです。外出についても、自分がいる場所が違うだけだと考える方もいるのかもしれません。
しかし、同じ家の中にいれば、赤ちゃんに異変があればすぐに気がつき、駆けつけることができます。赤ちゃんの泣き声が聞こえる状況で目を離すのと、家の外に出てしまうのとでは、状況は大きく異なります。
生後間もない赤ちゃんは、何かしらの異変が起きた際に自分で対処することができません。寝返りをうって元に戻ることができなかったり、ミルクを吐いて気管に詰まらせてしまったりしても、自分ではどうにもできないのです。
ベビーモニターなどを設置していれば赤ちゃんの姿を見ることはできますが、買い物中ずっと赤ちゃんの様子を見続けることは難しいでしょう。また、ベビーモニターで異変に気がついたとしても、すぐに赤ちゃんの元に帰れなければ意味がありません。
赤ちゃんはいつ起きるか分からない
「一度寝ついたらすぐには起きないから……」と思っていても、そのときに限って出掛けた1分後に目が覚めて泣き始める、という可能性があるのが赤ちゃんというもの。まったく予測不可能で、ほんの少し目を離したそのわずかな時間で、容態が急変して取り返しのつかない事態になってしまうこともあるのです。
SIDSを発症する恐れもある
容態が急変する例として、SIDS(乳児突然死症候群)が挙げられます。SIDSとは、睡眠中の乳児が突然死亡する病気のことです。うつぶせ寝をさせない、赤ちゃんを暖めすぎないようにするなどの発症リスクを低下させる予防法はあるものの、原因は不明なので発症を完全に防ぐことはできません。
火災や地震が発生した場合に速やかに助け出せない
自宅や近所で火災・地震が起きた場合も、赤ちゃん1人では何もできません。家の中にいれば赤ちゃんを抱いて逃げ出したり落下物から赤ちゃんを守ったりすることができますが、外出先から赤ちゃんを守ることはできません。災害時には一分一秒が明暗を分けることもあります。
「数分だけ」のつもりが数十分になることもある
数分だけのつもりが偶然知り合いと会って、つい話し込んでしまって気がつくと数十分経っていた…というのはよくあることです。
初めのうちは数分で買い物を済ませて帰れていても、回数を重ねるうちにエスカレートしていき、外出時間が少しずつ延びていくこともあるでしょう。また、家からの行き帰りで自分自身が事故にあって帰れなくなるといった可能性もあります。
海外では赤ちゃんを置き去りにすると逮捕されることも
海外では、ほんの少しの時間であっても赤ちゃんや幼い子供を置き去りにした親は「育児放棄」だとして逮捕されるケースもあります。日本では2020年4月現在、赤ちゃんや子供を自宅に置き去りにしても罪に問われることはありませんが、頻繁に置き去りにしている場合や置いていかれた赤ちゃんが大泣きしているときなどに、虐待を疑われて児童相談所や警察に通報される可能性はあります。場合によっては赤ちゃんが一時保護されたり、そのまま乳児院へ預けられたりといった措置が取られる可能性も。
少しの油断が大きな後悔を生んでしまうのを避けるためにも、赤ちゃんを置いて外出することは避けましょう。
家に置き去りにされた赤ちゃんが死亡・重傷を負った事例
ここでは、家に置き去りにされた赤ちゃんが命の危険にさらされた事件の例をご紹介します。
火災で8カ月の乳児と5歳児が重体、4歳児が死亡した事例
2017年4月に埼玉県で起きた、子供だけでの留守番中に火災が発生した事例です。この家庭は母親と3人の子供(生後8カ月、4歳、5歳)の4人暮らしでしたが、母親は夕方6時頃に仕事のために外出。その後、夜10時頃に「部屋から煙が出ている」と近隣住民から消防に火災通報がありました。4歳児は死亡が確認され、5歳児と生後8カ月の赤ちゃんも意識不明の重体となったそうです。
火元は電子レンジと見られていますが、詳しい原因は分かっていません。ただ、夜10時であれば大人は起きていることが多いため、母親が自宅にいれば火災が起きたとしても被害がもっと少なく済んだ可能性が高いといえるでしょう。
熱中症で3カ月の乳児が死亡した事例
こちらは、2017年7月に大阪府で起きた事例です。夜11時頃、生後3カ月の赤ちゃんをベビーベッドに寝かしつけた後に、赤ちゃんを家に残して母親が外出。母親は外で父親と落ち合って、そのまま外泊しました。翌朝9時頃に母親が帰宅すると、赤ちゃんは息をしていませんでした。
母親はクーラーを付けて外出したと供述していたようですが、死因は熱中症と見られています。また、過去にも複数回赤ちゃんを置き去りにして買い物などへ出掛けていたとも報道されており、短時間の買い物から次第にエスカレートし、外泊にまで至ったことが伺えます。
1人で外出したいときはどうすればいい?
赤ちゃんとは一緒に外出するようにする、といっても、四六時中赤ちゃんと一緒だと、体力的にも精神的にもお母さんの大きな負担となってしまいます。ほんのわずかな時間であっても、1人で外出してリフレッシュしたい、というお母さんも多いのではないでしょうか。
周囲の人が赤ちゃんを預かれる環境を
お母さんが1人で出掛けたい場合には、赤ちゃんのお父さんやご自身のご両親・義理のご両親(赤ちゃんのおじいちゃん・おばあちゃん)などに、少しの時間だけでも赤ちゃんの面倒をみてもらえるのが理想といえます。いざというときにスムーズに預けられるよう、日頃から赤ちゃんとご家族がふれあう機会を持っておくと良いでしょう。
ベビーシッターや一時保育の利用もおすすめ
ベビーシッターや一時保育を利用するという手もあります。地域のファミリーサポートなども活用すると良いでしょう。
ただし、ベビーシッターを頼む場合はベビーシッター会社経由で頼むことをおすすめします。個人のベビーシッターに直接依頼をした場合、万が一怪我などがあった際の補償が受けられないことがほとんどです。SNSやマッチングサイトなどでベビーシッターが依頼を受け付けている場合がありますが、個人のベビーシッターに直接依頼するのは避けましょう。
会社を経由して依頼をしても「知らない人に預けるのは少し不安……」と思う場合は、ベビーモニターを設置して定期的にチェックすると安心です。
ママ友に預けるのはアリ?ナシ?
赤ちゃんを置いて外出したいときに、ママ友に赤ちゃんを預けようと考える方もいるかもしれません。育児経験のあるママ友は頼もしい存在ではありますが、万が一事故や怪我が発生した場合に個人のベビーシッターと同様に補償はありませんし、ママ友との関係性が壊れてしまう可能性もあります。
他に預ける相手が見つからずママ友に預ける場合は、事前に予定を確認した上で丁寧にお願いをし、きちんとお礼をするようにしましょう。
託児施設のある場所へ外出するのも一つの手
近頃は託児施設を併設しているお店も増えています。ショッピングモールやスポーツジム、美容室、家具店など、さまざまな施設で赤ちゃんや子供を預けることができます。お店までは一緒に外出する必要がありますが、赤ちゃんを預けて買い物やリフレッシュを楽しむことができるのでこのような託児施設の利用も検討してみると良いでしょう。
まとめ
日本では赤ちゃんを家に置き去りにしても、法律で罰せられることはありません。しかし、家の中に1人きりでいた子供がベッドから落ちたり病気を発症してしまったりしたら、取り返しがつかないことになってしまいます。
買い物や息抜きのために赤ちゃん抜きで外出したいと思っているなら、家族に赤ちゃんを預けられるか聞いてみたり、ベビーシッター会社や託児施設のあるお店を探してみたりしてみましょう。
赤ちゃんはお母さん1人きりで育てるものではありません。周囲の人の助けを借りながら、赤ちゃんもお母さんも安心して過ごせるように考えてみてくださいね。