飲食店で火災を予防するには?火事の原因と事例について

2018.10.22店舗内の危険事故
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飲食店で火災を予防するには?
たびたびニュースで取り上げられる、飲食店の火災事故。消防庁の発表によると、平成27年1月~6月の半年間に全国で起きた飲食店での火災は265件。1日におよそ1.5件というペースで、飲食店での火災が発生していることになります。規模の大きさに差はありますが、この件数を見ると、飲食店での火災は飲食業の運営や経営に携わる方にとって他人事ではない、ということを実感していただけるのではないでしょうか。

そこで今回は、飲食店での火災事故を予防するために火事の原因や事例を学びながら、店舗運営者が実施できる、飲食店内での火事への対策について考えていきましょう。

飲食店の火災事故の原因は?

飲食店の火災事故の原因は?
毎日のように発生している飲食店内での火災事故。その原因はどのようなものなのでしょうか。

出火原因となりえる設備

飲食店の火災事故におけるほとんどの火元は、厨房のガス機器です。飲食店火災のおよそ半数が、ガスコンロやガスレンジ、ガステーブルなどから出火しています。

ガス機器の次に出火原因となりやすいのが、コンセントや差し込みプラグなどの電気設備です。接続部分が緩んでいたことなどにより過熱状態となり、出火する事故が多く発生しています。

上記の2種については飲食店の従業員が使用する設備ですが、そのほかにも七輪コンロや炭火ロースターなどの焼肉店などの座席に備え付けてあることの多い固形燃料機器による火災や、お客様が吸ったタバコが原因の火災などのように、お客様が関わる設備などが原因の火災も、飲食店で発生しています。

火災事故の原因

ガス機器が出火原因となっている火災事故が多いことは事実ですが、ガス機器を使用している店すべてで火災事故が起きているわけではありません。事故の原因は、設備そのものだけでなく、使い方に問題がある場合がほとんどです。

火災事故の原因を細かく見ていくと、出火原因の多くは人為的なミスです。
揚げ物をするために、油を入れた鍋を火にかけたまま別室へ移動してしまったり、差し込みプラグをコンセントにしっかり挿していなかったり、といった「うっかりミス」が招いた火災事故が数多く報告されています。

近年の飲食店では、調理時間の短縮や調理工程の簡略化のために、高火力の設備が導入されたり、さまざまな種類の調理器具が並行して使用されたりしています。そのため、こういったほんの一瞬の「うっかり」が、大きな事故につながってしまうのです。

また、営業時間が長く、定休日を取らない店の場合は、厨房機材のメンテナンスに時間をかけられないことがあります。このようなメンテナンス不足も、火災を引き起こしやすい環境をつくり出している一因です。

火災事故が延焼拡大する原因

火災事故が起きた際に、ガスコンロ付近が燃えた程度のボヤ騒ぎで済めばまだ良いのですが、延焼が拡大すると大災害になりかねません。ほんの小さな火種が原因で、店舗が全焼したり、近隣のビルや住宅までをも巻き込んだりするような大火事になる可能性もあります。

特に、厨房内の排気ダクトの内側にたまった油やホコリに火がつき、延焼拡大するケースが多いと報告されています。ビル内のテナントとして飲食店を経営している場合、排気ダクトを通じてテナント内の近隣店舗へ延焼するため、被害が拡大してしまうのです。このような排気ダクトに引火して起こる火災事故は「ダクト火災」と呼ばれます。

飲食店での火災事故の事例を紹介

飲食店での火災事故の事例を紹介
ここでは、飲食店で実際に起きた火災事故の事例をご紹介します。

【事例1】油を熱しているフライパンを放置して出火した火事

コンロにかけたフライパンで揚げ油を熱しながら、離れたところのオーブンで焼き物をチェック、さらにその合間に冷凍庫から食材を取り出して……というオペレーションをこなしている最中に、フライパンの揚げ油が熱くなりすぎて出火。

【事例2】廃棄する油を熱している間に放置して出火した火事

使用済みの天ぷら油を廃棄するため、鍋に凝固剤を入れてコンロで加熱している間に洗い場で洗い物をしていたところ、天ぷら油が熱くなりすぎて出火。

【事例3】布巾を乾かしている最中にコンロに落下し引火した火事

コンロの近くで、洗って絞った布巾を広げて乾かしていたところ、布巾が落下して引火。

【事例4】延長コードから出荷した火事

コーヒーメーカーの差し込みプラグと壁のコンセントとをつないでいた延長コードの、変換プラグ接続部分が原因不明の異常加熱を起こし、出火。

【事例5】油やホコリがたまったガス給湯器から出火した火事

長年掃除やメンテナンスが行われておらず、外装にも内部にも大量の油やホコリがたまってフィルターが目詰まりを起こしていたガス給湯器から出火。

飲食店での火災事故を予防するためには?

飲食店での火災事故を予防するためには?
上記で事例をご紹介したような火災事故を未然に防ぐためには、どのような対策をすれば良いのでしょうか。

従業員への防火教育を徹底する

飲食店での火災事故の多くは、従業員による「うっかりミス」が原因で起きています。ですから、まずは従業員に対する防火教育を行い、「火をつけたまま放置しない」「火の近くに可燃物を置かない」という基本的な2点を徹底指導することが重要です。

また、防火教育と共に、万が一火事が発生した場合の対応についても、しっかり教育を実施しておきましょう。飲食店内で火事が起きた場合には、通報・初期消火といった基本的な対応に加えて、お客様への案内や避難誘導の対応も必要です。
実際に火事が発生した際に落ち着いて対応できるよう、消防訓練を実施するなどしてシミュレーションをしておくことをおすすめします。

コンロなどの周りに燃えやすいものを置かない

コンロなどの周りに燃えやすいものを置かない
火事の発生を防ぐため、コンロなどの火や熱が出る設備の付近には、ティッシュやキッチンペーパー、メモ帳などの紙類や、布巾などの布類は置かないように徹底させましょう。もちろん、ガスボンベなどはもってのほかです。

これらの燃えやすい紙類や布類、危険物については、厨房内での置き場所を決めてそこから極力動かさないようにするといったルールを決め、周知徹底すると良いでしょう。

厨房設備の点検・清掃を定期的に実施する

厨房設備の点検・清掃を定期的に実施する
厨房設備の点検や清掃も、火災予防に大きく役立ちます。コンロ周りや換気扇のフィルターなどの火元に近い場所に油やホコリがたまっていると、火事が起こる原因となります。衛生面から考えても良くないので、このような箇所は特にしっかり清掃をしましょう。

また、排気ダクトなどはもちろん、流し台や冷蔵庫・冷凍庫といったその他の厨房機材も定期的に点検・清掃を行ってください。こういった機材に油脂がついていると、万が一火災が起きたとき延焼が大きくなる原因となってしまうからです。

火災への注意喚起ポスターを貼る

東京消防庁では火災予防に向けた上記対策をイラストにし、ホームページ上で配布しています。厨房の中や更衣室など、日常的に目が届く場所にイラストを貼っておくことで、防火意識を高める役に立ちますよ。

東京消防庁 火災予防イラスト一括ダウンロード

http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-yobouka/data/kasaiyobou_illust.pdf

まとめ

飲食店で火災事故が起きると、設備や建物の損傷被害や従業員の怪我につながることはもちろん、お客様や近隣店舗、近隣住民の方を巻き込む大規模災害となる可能性もあります。
火災予防のためには、従業員への教育を行い防火意識を高めると共に、厨房設備の点検と清掃を定期的に実施することが大切です。排気ダクトのような点検・清掃が難しい箇所のメンテナンスについて専門の業者を利用することも1つの手です。
日頃から火災予防対策を心がけて、安全で快適な店づくりをすすめてくださいね。

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タグ : 飲食店 事故 防止 対策 火災
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