車椅子の方が危険に感じる傾斜は?バリアフリーのレベルを見直そう

2018.11.05売場の危険な場所
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車椅子の方が危険に感じる傾斜
店舗にはさまざまなお客様が来店しますが、店舗や売場の環境によっては不便や危険を感じるお客様もいます。特に車椅子をご利用のお客様にとっては、店舗内のちょっとした段差やスロープの傾斜などが危険に感じられることがあります。来店したすべてのお客様に安心してお買い物を楽しんでいただくためには、どのようなお客様にとっても安全で快適に利用できる売場作りをすることが必要です。では、安全な売場作りをするためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
今回は車椅子をご利用のお客様に安心してお買い物を楽しんでいただくために注意したい、店舗のバリアフリーについてご紹介します。

車椅子の方が危険に感じる傾斜は?店舗の危険な場所

店舗の危険な場所
車椅子をご利用の方がお買い物中に危険を感じる場所とは、どのような場所なのでしょうか。ここでは、店舗の危険な場所をご紹介します。

傾斜が急、幅が狭い、手すりがないスロープ

傾斜が急、幅が狭い、手すりがないスロープ
店舗の入り口などに階段や段差がある場合、スロープを設置している店舗も多いのではないでしょうか。しかし、せっかくスロープを設置していても、それが車椅子での実用性や安全性を欠いたものであるなら、逆にスロープが車椅子をご利用のお客様にとって危険な場所になりかねません。

たとえば傾斜が急なスロープは、そもそも車椅子で上り下りすることができない可能性もあります。建築物に関するバリアフリー法では、スロープの傾斜は屋内の場合は1/12以下、屋外の場合は1/15が基準とされています。この基準よりも傾斜がきつい1/8などのスロープでは、介助者なしに車椅子で移動するのは大変危険です。
幅が狭いスロープも、傾斜のきついスロープと同様に車椅子をご利用のお客様にとってはとても不便なものです。無理に上り下りをしようとするとバランスを崩して転倒したり、壁やスロープに衝突したりしてしまう可能性もあり、大変危険です。
また、手すりは車椅子をご利用のお客様や身体の不自由なお客様にとって、とっさのときに掴まることのできる重要なものです。傾斜や幅が十分なものであったとしても、手すりのないスロープは安全性において不足があるといえるでしょう。できればスロープの両側に手すりがあるのが望ましいとされています。

数センチでも大きな障壁となる、段差

店舗に段差が多いと、車椅子をご利用のお客様は行きたい売場へ移動することすらできません。たとえ介助者の方が付き添っていたとしても、2段以上の段差では転倒事故の危険性も高まります。また、フロアごとに段差があるなど段差の数が多いと、お買い物を諦めてしまうかもしれません。たとえ小さな段差であってもスロープを用意するなどの対応が必要です。

狭くて通りにくい通路

狭くて通りにくい通路
商品を陳列する棚やディスプレイなどが通路を圧迫し、車椅子で通るのに不安を覚えるケースも多くみられます。ディスプレイに車椅子が引っかかって商品が転落し、怪我をしてしまう可能性もあります。できる限り通路を広く取り、車椅子やベビーカーでも利用しやすい売場作りを目指しましょう。

閉まるのが早い自動ドア

店舗によっては、空調の関係で自動ドアの開閉時間が短く、すぐに自動ドアが閉まってしまう店舗もみられます。歩行者よりも通るのに時間がかかる車椅子では、自動ドアに挟まれる危険性も歩行者より高くなってしまいます。出入り口を二重にして店舗内の気温を調節するなどして、自動ドアの開閉時間を長くできる工夫が必要です。

店舗で実際に発生した車椅子の事故事例は?

店舗で実際に発生した車椅子の事故事例
では、店舗では実際にどのような車椅子の事故が発生しているのでしょうか。

スロープでの転倒事故

電動車椅子をご利用のお客様がスロープを通行中、止まって勾配を確認していたところ前方に転倒し、頭を壁にぶつけて重傷を負いました。
この事故の原因は、お客様が車椅子の座面にクッションを重ねていたことにより重心の位置が高くなったことに加えて、安定性が悪くなっていたことだと結論づけられましたが、スロープがより緩やかなものであれば事故は起きなかったかもしれません。

段差での転倒事故

車椅子をご利用の30代のお客様が飲食店で食事をしていたところ、車椅子スペースに段差があり転倒しました。左足を骨折し、全治1カ月以上の怪我となったことから、店舗側へ慰謝料請求を検討しているとのことです。
店舗内に段差があるのであればスロープを設置する、もしくはご案内時にお声がけをするなどしていれば、このような事態にはならなかったでしょう。

事故を予防するための店舗作り

事故を予防するための店舗作り
車椅子をご利用のお客様の転倒などの事故を予防するためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

バリアフリーのレベルを見直そう

2006年に施行されたバリアフリー新法により、百貨店やスーパーマーケットなど、多数の人が利用する建物においてはバリアフリー化が義務付けられています。車椅子用トイレやエレベーターの設置、広い通路の確保はもちろん、滑りにくい床や点状ブロック、身障者用駐車場の設置など、奨励されているバリアフリーのレベルはさまざまです。
すべての項目について定められた基準をクリアしているかどうかを確認し、基準に満たない場合には設備の配置や増設などを速やかに検討しましょう。

事故予防のために従業員に徹底すること

車椅子の事故を予防するためには、店内設備をバリアフリー対応するだけでは十分だとは言えません。従業員に対して、車椅子をご利用のお客様への対応の研修を実施しましょう。
事故予防に対する意識を高めてもらうためには、車椅子で店舗内を移動するとどうなるのか、実際に体験させることが一番の近道です。本物の車椅子を使用して、車椅子利用者役とサポートする従業員役のロールプレイを行いましょう。利用者の立場になってみれば、車椅子を動かす前に声をかけることや、段差を乗り越えるときにゆっくりと操作をすることの大切さがよく分かるはずです。

このようなロールプレイ研修を行った上で、車椅子をご利用のお客様に対して積極的に声かけをするよう徹底していきましょう。
また、車椅子をご利用のお客様からは、事前に車椅子での来店が可能かどうかといった問い合わせが入ることがあります。このような場合に「来店は可能です」といった可否返答のほか、「入り口に段差がありますが、横にスロープを設置しております」といった細やかなご案内ができるようにしておくと良いでしょう。

まとめ

車椅子をご利用のお客様にとっては、スロープのちょっとした不備やほんのわずかな段差が危険のタネとなります。店舗内の移動にすら危険を感じるお店からは、誰でも自然と足が遠のいてしまうのが人間の心理です。
車椅子をご利用の方をはじめ、身体の不自由なお客様にとって安全で優しい売場はもちろん、すべてのお客様が安心して買い物を楽しめる、安全な売場作りを目指しましょう。

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タグ : スーパー 売場 自動ドア 転倒 事故対策
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