安全衛生教育とは?小売業での必要性と具体例をご紹介

2023.01.26店舗の安全管理
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労働者が安全かつ衛生的な状態で働ける環境づくりは、企業が積極的に取り組んでいくべきことです。環境整備に加えて、労働災害が起こらないよう業務中の怪我や事故に関しても徹底した対策が必要です。

今回は、安全衛生教育とはどのようなことなのか、そして小売業で取り組んでいく必要性や具体的な安全衛生教育の例などをご紹介します。

 

安全衛生教育とは

安全衛生教育とは、労働者の就業にあたって、必要な安全衛生に関する知識を習得・実践するために行われる教育のことです。安全衛生教育に関しては労働安全衛生法第59条、60条で定められており、例えば雇入れ時(新規採用時)や作業内容の変更時の教育、特別教育、職長等に対する教育、危険有害業務従事者への教育などが挙げられます。

また、その事業場で従事する労働者の人数によっては、安全衛生業務の従事者として安全管理者・衛生管理者など有資格者の専任、安全衛生委員会の設置などが義務付けられています。例えば小売業の場合、それぞれの店舗が主体となって安全衛生教育に取り組み、それを本部がサポートする形で教育・研修を実施します。

参考:労働安全衛生法 第6章 労働者の就業に当たっての措置(第59条-第63条)|安全衛生情報センター

安全衛生教育の重要性

安全衛生教育は、労働災害を未然に防ぐことが目的です。そのためには、企業の経営層だけでなく、労働者の指揮・監督者や労働者本人が、実務において注意すべき安全衛生に関してあらかじめ理解し、必要な施策を実施する必要があります。

例えば店舗内での事故防止のため、指揮・監督者が労働者に教育や研修などを行うことが挙げられます。日頃から職場内で安全衛生に関する意識を高めておくことで、労働者一人一人がより良い職場づくりに注力することにつながります。

 

安全衛生教育の実施タイミング

安全衛生教育の実施については、雇入れ時教育、作業内容変更時教育、職長等教育、危険有害業務従事者への教育、安全衛生業務従事者に対する能力向上教育などがあります。実施するタイミングとして、ここでは主な3つのタイミングをピックアップして解説します。

 

新人の雇入れ時

労働安全衛生法第59条と労働安全衛生規則第35条において、新たに雇い入れた労働者に対し、従事する業務について安全衛生教育を実施しなければならないと定められています。労働者が新たな環境で仕事をするにあたり、安全に働けるよう知識を共有することが必要です。
これは正社員だけに限らず、パートタイマーやアルバイトなどの非正規雇用の方も対象となります。安全衛生教育は原則的に所定労働時間内に実施するものとし、かかる費用は企業が負担することとなります。

具体的な教育内容は、労働安全衛生規則35条で以下のとおり定められています。ただし(1)~(4)については、業種によっては省くことができます。

<blockquote>

<p>第三十五条  事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。

一  機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。

二  安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。

三  作業手順に関すること。

四  作業開始時の点検に関すること。

五  当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。

六  整理、整頓(とん)及び清潔の保持に関すること。

七  事故時等における応急措置及び退避に関すること。

八  前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

2  事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。</p>

<cite>引用元:<a href=” https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-1h4-0.htm “>労働安全衛生規則 第1編 第4章 安全衛生教育|安全衛生情報センター</a></cite>

</blockquote>

 

業務内容変更時

新人の雇い入れ時と同じく、業務内容を変更する際についても、衛生教育を実施する必要があります。主な教育内容の項目も同等です。

以前とは異なる業務に従事することになった場合と、作業で使用する設備や方法などに変更があった場合とでは、注意すべき内容も異なります。状況に応じた内容で安全衛生教育を実施し、その業務に適した内容へ従業員の知識や情報をアップデートしなければなりません。

 

毎月の安全衛生委員会の開催後など

努力義務ではありますが、安全管理者や衛生管理者、作業主任者など安全衛生管理者等に向けた能カ向上教育、健康教育や健康保持増進措置などの実施が推奨されています。

能力向上教育に関する担当講師は、該当する業務に関する知識や教育に関する知識、およびその経験を持つ人と定められています。能力向上教育については、初任時教育、定期教育、随時教育の大きく3つに分けられます。

例えば毎月開催する安全衛生委員会の開催後の時間を使い、安全衛生教育の研修などを行うケースもあります。定期的に実施するためにも、会議で議題に上がった問題について、従業員への啓蒙や教育活動をするのが良いでしょう。

 

小売業の店舗向け・安全衛生教育の具体例

小売業の店舗の場合、どのような安全衛生教育が必要か、具体的な例を挙げてご紹介していきます。

 

事故事例の共有

実際に起きた業務中の事故について、詳細な内容を全員で共有します。過去にその職場で起こった事故や、同じ業種の店舗で起こった事故などは、具体的なイメージが湧くことから従業員も危険性や対策の必要性を理解しやすいでしょう。

店舗内の危険事故については、本サイト内でも多数紹介をしています。
アパレル店・衣料品売場で起きた事故事例と店内事故を防ぐ安全対策 | 売場の安全.net
ホームセンターやDIYショップの売り場に潜む危険とは?火災などの事故事例 | 売場の安全.net
店内商品の荷崩れで事故を起こさない安全な積み方は?| 売場の安全.net
漏電の原因と対策は?電気事故の被害事例もご紹介 | 売場の安全.net

その他の業種・シチュエーションの事故事例もご紹介しています。事故事例をお探しの場合はサイトTOPからページ内検索をお試しください。
売場の安全.net

また、実際に事故にはつながらなかったものの、もう少しで甚大な事故につながり得る事態を報告する「ヒヤリハット報告」もよく実施されています。

ヒヤリハットについて詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
ヒヤリハットとは?よくある事例や対策について解説| 売場の安全.net
ヒヤリハット報告の重要性とは?職場に定着させるための工夫をご紹介| 売場の安全.net

KYT(危険予知訓練)

KYT(危険予知訓練)とは、実際に働く職場において労働災害などの原因となるような危険要因を予測するとともに、どうしたら未然に防げるか行動前に解決する訓練のことです。K・Y・Tとは、K(危険)、Y(予知)、T(トレーニング)という意味を指します。

以下の流れで段階的に進めていく「KYT基礎4ラウンド法」を用いることで効果的にトレーニングを行うことができます。

1ラウンド:現状把握……どのような危険が潜んでいるのか
2ラウンド:本質追求……危険のポイントはどこか
3ラウンド:対策樹立……自分ならどうするか
4ラウンド:目標設定……私たち(グループ)はこのようにする

具体的には、まず業務中の様子が描かれたイラストシートなどを準備し、5~6人程度のチームを編成します。司会・振興や書記など役割を決め、訓練の趣旨を説明してイラストシートを提示します。

 

1ラウンド:どのような危険が潜んでいるのか

リーダーがイラストシートを提示して状況を説明し、どんな危険がひそんでいるか問いかけます。メンバーは「棚から道具が落ちそうになっている」「台車の引き方が間違っているので腰を痛めそう」などの危険なポイントを発言し、書記がその内容を記入していきます。

2ラウンド:危険のポイントはどこか

リーダーは1ラウンド目で出された危険のうち、特に重要な危険は何かを問いかけます。メンバーは重要だと思う項目を発言していき、最終的に全員でそのなかから1~2つに絞り込みます。

3ラウンド:自分ならどうするか

続いて、特に重要だと思われる危険に関して、予防・防止するためにあなたらならどうするかとリーダーが問いかけます。メンバーは具体的で実行可能な対策を考え、発言し、書記が記入していきます。メンバーからは各3つ程度の対策を出してもらいます。

4ラウンド:私たち(グループ)はこのようにする

最後に、3ラウンドで意見が出た対策の中でも特に重要な「チームで必ず実施すべき対策」はどれなのかを考えます。全員の合意で重点実施事項(各1項目)を絞り、チーム行動目標として定めます。

テキストや映像を活用した講習

事例やヒヤリハット報告の共有、KYTに加え、テキストや映像などを使った安全衛生教育のための講習も有効です。講習の内容を踏まえ、実際に危険な要因は何なのか、どうすれば防止できるのか、実店舗にあった対策を講じることができます。

弊社ロイヤルでは、電子カタログなどで「ロイヤル安全カタログ」を提供しています。実際に店舗で起こりうるディスプレイ棚の跳ね上がりや落下、ブラケットやフックの先端による受傷など、具体的なリスクとその対策を、わかりやすいイラストや漫画を交えてご紹介しています。
店舗で事前にできる事故対策にはどのようなものがあるか、ぜひ一度確認してみてください。

 

安全衛生教育にもご活用いただける「ロイヤル安全カタログ」はこちらから!
https://www.royal-co.net/web/pdf/catalogue/anzen.pdf

まとめ

従業員の安全と健康を守るため、安全衛生教育を徹底しておくことが大切です。企業単体に限定せず、各店舗において、安全衛生意識を醸成する必要があります。安全衛生教育の重要性を踏まえ、定期的な教育と安全対策を実施しましょう。

「ロイヤル安全カタログ」などのロイヤル電子カタログ一覧はこちらから!
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タグ : 必要性 とは 安全衛生教育
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